社会資源

歴史

古代からの生活の場であったことを示す縄文時代の遺跡が数多くある。
安土桃山時代末期まで稗貫氏の治世下であったが、江戸時代には南部氏が統治する。廃藩置県が行われた後は、明治22 年(1889 年)の町村制施行、昭和29 年(1954 年)前後の町村合併などを経て、花巻市、大迫町、石鳥谷町、東和町が誕生し、平成18 年1 月1 日、同1 市3 町による新設合併が行われた。

『花巻』の由来

1.花の牧説 昔、この辺りに花の牧と称して名馬を産する牧場があったということ。
2.花の淵説 昔、北上川の西の方にある大淵に桜木立が繁っていて水上に散る花の逆巻く様子や渦巻く様から花巻淵と言われたこと。
3.アイヌ語説 花巻はアイヌ語のパナマッケ(川下の平地)が訛ってパラマキ(広い原)から国語風にハナマキと呼ぶようになった。
4.磐基節 昔、この地が磐基(ハンキ)という駅名として置かれておりそれが訛って花巻となった。

道路、交通

花巻は、江戸時代に整備された五街道の一つである奥州街道(日本橋から青森県三厩村)の要所であると同時に、沿岸部と内陸部の物資交流の拠点としても恵まれた位置にあり、片栗粉、硝石などの特産物や穀物・水産物の集散地として栄えた。

明治時代に入ると、1890(明治23)年に日本鉄道(現東北本線)が盛岡まで延長されたのに伴い、花巻駅が開業。1913 年(大正2)年には花巻-土沢(東和町)間に岩手軽便鉄道(現釜石線)が開通し、1947 年には釜石まで延長された。

【SL 銀河の復活】
1972 年に廃止になった後、岩手県営運動公園に展示保存されていたC58 形が4 月12 日からJR 釜石線(花巻―釜石間)で定期運行を行う「SL 銀河」として、総工費20 億円をかけ復活することになった。JR 東日本の東北復興三本の企画の一つである。八戸、久慈間を走る「東北エモーション」、大船渡、一関間を走る「ポケモンウィズユートレイン」、そして花巻、釜石間を走るSL 銀河。

人材

・詩人 宮沢賢治
明治29 年(1896)花巻市生まれ。花巻農学校で教鞭を執る傍ら、多くの詩や童話を創作。教育者、農業者としても活躍した。
・彫刻家、詩人 高村光太郎
明治16 年(1883)東京生まれ。昭和20 年(1945)、親交のあった宮沢賢治の実家に疎開し、晩年の7年を花巻で過ごした。
・国際人・新渡戸稲造
文久2 年(1862)盛岡生まれ。農学者・教育者であり国際連盟事務次長も務めた。前5000 円札の肖像で知られる。「願わくはわれ太平洋の橋とならん」の言葉で有名。新田開発など郷土花巻の地域開発に尽力した。
・洋画家・萬鉄五郎
明治18 年(1885)花巻市東和町土沢生まれ。日本の前衛絵画の先駆者。土沢の風土と西洋の新しい美術表現を融合させた独自の画風を確立させた。
宮沢賢治/鹿踊り

教育、福祉

市内に、大学1、高校7、中学校11、小学校19 のほか、特別支援学校1、職業能力開発校1 がある。

遺跡

・熊堂古墳群(上根子字熊堂)
熊野神社境内中心に16 基の円墳が確認された。8 世紀律令政府の下、この地方を支配した「蝦夷」たちの墓とみられている。
・立石遺跡(大迫町)
立石地区にある縄文時代後期から晩期前半の祭祀遺跡で、300 点を超える土偶片、石鏃、石棒などが出土。
・アバクチ洞穴遺跡(大迫町)
平成8 年(1996)に東北地方で初めての弥生人骨を発見し、日本人のルーツを探る上で非常に重要な資料として全国的に有名。
・風穴洞穴遺跡(大迫町)
上層からは縄文時代の後期・晩期の遺物、下層からはナウマンゾウやヘラジカなどの大型動物の骨が出土している。氷河期時代の動物相を知る上で極めて貴重な遺跡。

伝統芸能、年中行事

・早池峰神楽(岳神楽、大償神楽)
早池峰神楽は大償と岳の2つの神楽座の総称で、昭和51 年(1976)、国の第1 号の重要無形民俗文化財に指定された。その初源は南北朝時代にまで遡るものと考えられ、500 年以上の伝統を持つ非常に古い神楽であるといわれている。平成21 年(2009)、早池峰神楽はユネスコ「無形文化遺産の保護に関する条約」代表一覧表への記載が決定した。
・鹿踊り
前腰に締め太鼓をくくりつけ、自ら打ち自ら歌いながら踊る太鼓踊り系と、胴前が独立していて、踊り手が囃子に応じて踊る幕踊り系に分類される。鹿の角を飾り黒い毛釆(けざい) のある権現型獅子頭を頭に、丈の高いささらを腰の後ろから背中を通して頭上高く抜き出している。幕、袴、ながしで全身が覆われた異様な装束で踊る様子は、一種の霊力を連想させる。
・鬼剣舞
祖霊をまつり怨霊を鎮めるものといわれ、舞い手が異風の装束をつけ、いかつい鬼面で太刀を持ち大地を踏みしめるようにして激しく踊る。鬼剣舞のほか、念仏剣舞、ひな子剣舞などがある。

【年中行事】
・蘇民祭(1 月2 日)〈胡四王神社〉
・高村祭(5 月15 日)〈高村山荘〉
・早池峰神社祭礼(8 月1 日)※岳神楽奉納
・清水祭(8 月9 ~ 10 日)
・花巻祭(9 月5 ~ 7 日)
・大償神社祭礼(9 月15 日直後の日曜)※大償神楽奉納
・賢治祭(9 月21 日)〈賢治詩碑〉
・鳥谷ヶ崎神社材齢(9 月5 ~ 7 日)

工芸、技術

・花巻人形
仙台の堤人形の製作技法を伝習した花巻鍛冶町の太田善四郎が、享保年間(18 世紀初)からつくりはじめたといわれる土人形で「からげびな」と呼ばれている。節句に飾る内裏びなをはじめ、天神、恵比寿、大黒などの縁起物から金太郎、山姥、汐くみといった風俗物を含めて種類は1,000 とも1,500 ともいわれ、どの人形も梅、桜、牡丹など春の花々が描かれている。
・鍛冶丁焼
花巻市鍛冶町、古舘伊織の創業と伝えられている。少なくとも天保(1830 年)以前に、古舘家が南部藩の御小納戸(職人支配の役所)の支配下にあって焼物を行なっていたとみられている。
・成島和紙
東和町成島地区では日本北限の和紙である成島和紙を生産しており、約300 年の伝統を持つ。この地域に生育する「コウゾ」という木の皮を原料に「ノリウツギ」の帖を混ぜて漉きあげるもの。かつては農家の副業として盛んであったが、現在は1軒のみが受け継いでいる。